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琴平で人と出会う旅。

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出会える人

出会える人 Vol.1

琴平の文化や歴史を次世代へ伝える

五人百姓 池商店 28代目 池 龍太郎さん

琴平町生まれ、五人百姓池商店28代目。銀行員や行政職を経て、家業を継ぐ。現在は「語り部事業」という活動を通じ、町の文化や歴史を次の世代へ伝えることにも力を入れている。

琴平の象徴、八百年続く飴づくり

金刀比羅宮の参道を歩くと、どこからか甘い香りが漂ってきます。その先にあるのが「五人百姓 池商店」。約八百年ものあいだ受け継がれてきた、こんぴら名物「加美代飴」を作る老舗です。

「五人百姓」とは、金刀比羅宮の神様が琴平にやって来た際、共にこの地へ移り住んだ五家の一族のこと。その五家だけが境内で飴を販売することを許された、特別な家系なのだそうです。予約をすれば、伝統の飴づくり体験も行われており、参拝の思い出に自分だけの飴を作ることもできます。

琴平で生まれ育ち、語り部となる

この歴史あるお店を守るのが、28代目の池さん。琴平の地で生まれ、銀行員や行政職を経て、家業を継ぎました。現在は「語り部事業」という活動を通じ、町の文化や歴史を次の世代へ伝えることにも力を入れています。

琴平の魅力は?

まず、人の温かさが一番の魅力だと思います。日本で最も小さな県である香川県の中で、二番目に小さな町が琴平町。だからこそ“スモールワールド”のような距離の近さがあって、会いたい人に偶然出会えることが多いんです。お店も多く開けた雰囲気で、人と関わりやすい環境が整っている。

また、古くから外から来る人を受け入れてきた歴史がある町なので、“よそから来た人”という壁が生まれにくい。百年以上続く老舗が小さな面積の中にいくつもあるのも特徴です。地元で育った人も、移住してきた人も共に町を動かしていて、それが琴平らしい魅力だと感じています。

学生時代に抱いていた想い

卒業文集には“香川県を良くするために働きたい”と書いていました。僕は両親が長年の不妊治療を経て、ようやく生まれたひとり息子なんです。だから小さい頃から“この家を守っていかなくては”という意識が自然とありました。

両親は一度も“家業を継げ”とは言いませんでしたが、金刀比羅宮の神事を手伝う祖父や父の姿を見て育ち、飴を通してご利益を全国へ届ける姿が本当にかっこよく映っていました。

最初から家業を継ごうと思っていたわけではなく、香川県に戻って神事を手伝いながら、自分が暮らす地元をもっと良くしたいと思っていました。行政に勤めていたときも、町の良さを人に伝えるのが好きで、成人式や学校、地域の講座などで、琴平の魅力を伝える活動を続けていました。

語り部事業を始めた理由

語り部活動を始めたのは、大学1年生のときの自己紹介がきっかけです。自分の町の話をしたら、友人たちが琴平に興味を持ってくれて、実際に香川へ旅行に来てくれたんです。うちの飴を買って授業中に食べていたこともありました。

『どうして琴平に行ったの?』と尋ねたら、『お前の話が面白くて、実際に確かめに行きたくなった』と言ってくれたんです。その言葉で、自分が家族から受け継いできた琴平の知識や物語には大きな価値があるんだと気づきました。

その体験から、“自分の話を聞いた人が次の人を誘い、その人がまた次の人に語る”という連鎖を作りたいと思いました。それが語り部事業の原点です。

僕は、琴平の外に住む人が『琴平って良いところだよ』と語ってくれることこそが、町の価値を高める力になると思っています。住んでいないのに熱く語ってくれる――それがどれほどすごいことか。そうやって琴平の魅力を次の世代につないでいくことが、僕の使命だと思っています。

家業を継いで感じたこと

池商店を継いで本当に良かったと思っています。最初の頃は、同世代の後継ぎがほとんどおらず、若手は自分ひとりだけでした。

僕たちの親世代は、瀬戸大橋が開通して観光が賑わっていた時代を知っている人たちです。その後、観光客が減っていく中で“子どもたちには外で自由に働いてほしい”と考える親が多く、結果的に地元へ戻る人は少なかった。

それでも『日本有数の観光地であるこの町を、ここで終わらせてはいけない』という強い気持ちで池商店を継ぎました。その姿を見た同世代が、『自分も何かやろう』と動き出してくれて、近所の店を改装したり戻ってきたりする人が増えました。最初のひとりは孤独だけれど、次に続く人たちが現れた瞬間、町が少しずつ変わっていくのを感じられるんです。

モットーと信念

僕の会社の理念は『五人百姓の誇りとともに、幸せを分かち合う心を千年へ』です。土地に根付くものには、すべて意味と価値があり、同じものはひとつとして存在しません。先人たちが残してくれたものを大切に使わせていただくこと、人の縁をありがたく思い、みんなで幸せを分け合うこと。それが何よりも大切だと思っています。

池商店は、金刀比羅宮のご利益を“飴”という形で分けるお店です。その想いや精神を千年先までつないでいきたいと願っています。

心に残る言葉として、スティーブ・ジョブズの『今日が人生最後の日だとして、これからすることは本当にやりたいことか?』、そしてマハトマ・ガンジーの『明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学べ。』を大切にしています。毎日、自分にできることを精一杯やる――その想いで走り続けています。

いつかこの町を走れなくなる日が来るかもしれません。だからこそ、次にバトンを受け取って走ってくれる人たちが必要です。琴平の魅力は、風景や歴史だけではなく、そこに生き続けてきた“価値”を誰かが受け継ぐことで守られていくもの。語り部としてその価値を伝え、次の世代へつなげていきたいと考えています。

最近読んだ本

仕事や町づくりに役立つ本をよく読みます。最近では稲盛和夫さんの『京セラフィロソフィ』や、琴平町にも来てくださった近内悠太さんの『世界は贈与でできている』が印象に残りました。また、喜多川泰さんの作品も好きで、『運転者』と『手紙屋』は、これから進路を考える若い人たちにぜひ読んでほしいと思っています。

終わりに

池さんの言葉には、町への深い愛情と、未来へつなげようとする情熱があふれていました。
もし琴平を訪れたなら、参道の途中でふと立ち寄ってみてください。
一粒の飴に込められた“幸せを分かち合う心”を感じられるはずです。

五人百姓 池商店

香川県仲多度郡琴平町
公式サイト:https://www.ikesyouten.com

この記事を書いた人

琴平縁むすびプロジェクト またたびさん

私たちは、香川大学『琴平縁むすびプロジェクト またたび』です。琴平で活躍する「琴平ビト」を取材・発信し、人と人との縁をむすびながら、その想いやストーリーを通して琴平の新たな魅力を広げています。