出会える人
出会える人 Vol.7
ふらっと立ち寄れて、心がほどける宿
つるや旅館 若女将・代表取締役 木村 成美さん
老舗旅館「つるや旅館」の若女将であり社長。館内のご案内から料理の説明まで、女将・若女将が直接対応。“サービス“ではなく“おもてなし”。マニュアルではなく、目の前のお客さまに合わせて整えていく。それを流儀として、約180年つづく宿で、おもてなしを受け継ぎながら「次世代へ素晴らしさを繋ぐ」ことに挑戦中。
はじめに:ホテルと旅館の違い
木村さんによると、いちばんの違いは「おもてなしまでのプロセス」。ホテルは“お願いして提供されるサービス”が中心、旅館は“お願いされる前に気づいて手を差しのべる”のが基本。その言葉どおり、つるや旅館では“先回りの心遣い”が、そっと旅の疲れをほどいてくれます。
今回は、琴平の老舗旅館「つるや旅館」の若女将であり社長でもある木村成美さんに、お仕事のこと、旅館の今とこれからを伺いました。“老舗”と聞くと少しだけ敷居の高さを想像しがちですが、ここには肩の力が抜けるやさしい空気が流れています。旅の途中でちょっと寄り道——そんな気分で、扉を開いてみてください。
つるや旅館の紹介
創業はおよそ180年前。外観には歴史の風格が漂い、館内へ入ると一転して、あたたかな灯りと落ち着きのある調度が迎えてくれます。
アクセスは、JR琴平駅から徒歩8分、琴電琴平駅から徒歩5分。参道や周辺散策の拠点にも最適です。
この旅館のいちばんの魅力を教えてください。
「女将がいる宿であること、そして“おもてなし”そのものが魅力です。」
館内のご案内から料理の説明まで、女将・若女将が直接対応。“サービス”ではなく“おもてなし”。マニュアルではなく、目の前のお客さまに合わせて整えていく——それがつるや旅館の流儀です。
「一人ひとりをよく見ること。必要な配慮を見極め、臨機応変に動くことを大切にしています。」
料理も“ここだけの体験”
地元食材を活かした会席は、見た目にも美しく、滋味ゆたか。“旅館で食べた味が忘れられない”——そんな記憶の一皿に出会えます。
木村さんが感じる琴平の魅力はどんなところでしょう?
「町のつながりの強さですね。顔の見える関係が世代を超えて続いている。観光で初めて来られた方でも、不思議と“初めてじゃない感じ”で迎えられる、人の温かさがある町です。」
旅館の現状と課題を教えてください。
「歴史を重ねてきた分、建物や設備の老朽化は避けられません。価値ある“古さ”を守りつつ、必要な部分は新しいやり方へ更新する——そのバランスが難しいところです。だからこそ、言葉の選び方や丁寧なコミュニケーションで“古さを魅力として感じていただく”ことも、大切にしています。」
仕事のやりがいは?
「お客さまが笑顔でお帰りになる瞬間ですね。自分だけでなく、スタッフが評価されている姿を見ると、旅館という“ひとつのチーム”が認められたようで、いっそう励みになります。」
若女将として接客で心がけていることは?
「私自身は目立ちすぎないこと。あくまで黒子のように、お客さまがリラックスできる空気をつくる役に徹します。そっと寄り添い、旅の思い出に彩りを添える存在でありたいんです。」
ブランドの転換:「肩書きに頼らない」
かつて、つるや旅館は“旧金刀比羅宮御用達の宿”として知られてきました。
しかし木村さんは、今の旅のスタイルや町の回り方の変化を見つめ、「肩書きではなく、女将のおもてなしそのものを価値として打ち出す」方向へブランドを転換。
「参道だけを楽しむ方も増えました。だから“かつての看板”に寄りかかるのではなく、今ここで体験できる良さをまっすぐ伝えたいと思ったんです。」
これから目指す「つるや旅館」の姿は?
「表からも陰からも、琴平を支えられる宿でありたい。おもてなしを通じて、お客さまの“それまでの旅路”と“これからの旅路”をつなぎ、**琴平を楽しむ“中心拠点”**になれたらと思います。」
筆者のおすすめ・ちょっと寄り道
館内1階にある“ちょっとバー「プレジデント」”で、一杯。旅の夜、やわらかな余韻にひたりながら、今日の思い出をゆっくり語る時間——そんなささやかな贅沢がここにはあります。
まとめ
歴史をたずさえつつ、今の旅人に寄りそうしなやかさ。つるや旅館は、“先回りの心遣い”で旅をほどく宿でした。堅苦しさはなく、ふっと立ち寄れる気軽さと、帰るときの満ち足りた笑顔。次の旅の計画に、ぜひ“ちょっと寄り道”を。
この記事を書いた人
琴平縁むすびプロジェクト またたびさん
私たちは、香川大学『琴平縁むすびプロジェクト またたび』です。琴平で活躍する「琴平ビト」を取材・発信し、人と人との縁をむすびながら、その想いやストーリーを通して琴平の新たな魅力を広げています。